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「日本一美しいダム」と言われる堰堤 [ふるさと]

私の実家は いくつも谷がある山間部の
小高い場所の森の中にあります。

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けっこう高い場所なのに
裏庭には こちらでは「井手(いで)」と呼ばれる小さな井路が通っていて、
冷たい水がいつも勢いよく流れていました。


その水は家の裏手の幾枚も重なる棚田を潤していました。


裏庭の流れでは野菜の土を落としたり牛の飲み水に使ったりもしましたし、
夏は安全な水遊びの場でありました。とても冷たい水でした。
夜は水の流れの音がひときわ高くなるのを不思議に感じていました。

あまりに当たり前すぎる風景に、
その井路を作る苦難の歴史や
水の通り道をこれまで意識しないまま過ごしてきました。



私が毎日 水音を聞きながら育った井手の水は、
実はこのダムから流れているのです。


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実家からダムまで直線距離14.5㎞、
車では曲がりくねった細い道を18.1㎞、
水の通り道は、山を貫き谷を越え幹線16㎞、末端のわが家まではさらに距離があるはず。



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正式には白水溜池堰堤(はくすいためいけえんてい)と言いますが、
白水ダムという名前で親しまれています。
今は重要文化財に指定されています。


このダムの歴史は、
私の拙い筆では伝えきれませんので、
下記の記事などを参考にされてください。

http://www.adnet.jp/nikkei/kindai/48/  日本の近代遺産50選

http://www.water.go.jp/honsya/honsya/pamphlet/kouhoushi/2010/pdf/1005-07.pdf


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人々の熱意を結集して作られた美しい堰堤。
小野安夫技師が考え抜いた地盤の弱さを補うための設計は、
「日本一美しいダム」「ダムの貴婦人」等と言われる形になりました。


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ズームにしてみたりホワイトバランスを調整してみたり……。
何枚写真を撮っても
レースのような水紋や石組みの曲線の美しさは伝えきれません。
こちらにお越しの際には
ぜひご案内したいと思います。


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でも、これは美しさを追求したものでも観光目当てのものでもありません。
あくまでも農村を豊かにしたいと願った人々の熱意から生まれた形なのです。
今も現役のこの「遺産」は、
奥深い山の谷間から400ヘクタールに近い田畑を潤し続けています。
最初の写真の棚田の多くが
このダムから流れる井路のお世話になっています。


管理事務所の「注意」に従っての見学をお薦めします。



ずっと育てられてきたにもかかわらず
その歴史をを確認しないまま、今日まで生きてきたことが恥ずかしい。
……そんな想いに駆られる美しい姿でした。


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