久しぶりに……

１１月の初めに義父が亡くなり、あわただしい毎日を送ってきた。
実の親より長い時間
一緒に暮らしてきたので、
ぽかりとあいた一人分の空間に
まだなじめないでいる。

昔はよく家族でキス釣りにいった。
義父は櫓をこぐのが上手かった。
川釣りも好きで
小魚を釣ってきては自分で焼いて甘露煮にしていた。

終戦の年の４月、義父は愛媛県佐田岬の砲台から
戦艦大和の最期の出撃を見送ったそうだ。
通過してしばらくしてから
大きな大きな引き波がざぶんざぶんときたという。
……ヨットに乗って、大きな船が通ったあと引き波に揺れるとき、
私は義父のこの思い出話が脳裏に浮かぶ。


ちょっと一息ついたところで
大きな息を吸うために
久しぶりに海に行ってみようかと
話しているところである。