SSブログ

「風の靴」 [本]

PA074835.jpg




ふとした折に
こんな文章が目に留まった。つい、最近のこと。


       ……

      「シート、ひけ!」
      湾の入り口のテトラポッドに近づくと、風間ジョーが、明るい声で指示を出した。
      湾を抜けたら、エンジンを切って、帆を上げるのだ。

      (中略)

      悪い風はみんな、風の神に袋に詰められたような朝だった。
      アイオロスはみごとに風をつかんで走っていた。まるで風の靴になったように。
      風の靴は、軽々と海を駆けていった。
      ずっと駆けていった。


      ……


あれ、これ、ヨットの話だ。
そのあとも、「スキッパー」や「クルー」、「コックピット」などの言葉が出てくる。
読みたいと思ったのは、
“THE WHY OF THE WIND”という詩の一節に惹かれたので。

朽木祥という作家の「風の靴」という作品。

早速Amazonに注文して取り寄せた。
明るい海を駆けるヨットの表紙絵。
クルーザーとディンギーが描かれた扉。
そして、A級ディンギーとクルーザーの用語解説。
……児童文学には珍しいんじゃないかなあ……。


少年少女向けにこんな作品もあったのだと
久々にワクワクしながら読んだ。

(ヨットのカタカナ用語がふんだんに出てきて、
 ヨット初心者の私は、状況がわかるとうれしくなってしまうのだ。)

ほんの三日間だけの地味な話だけれど、
一気に読み終わると、みずみずしい感動が残って、
ハーバーに戻ってきたときのような心地よさがあった。

PB185266.jpg


あとがきに
「最後のページを閉じたら、海に出かけて行きたくなるような、
 あふれる光のなかに駆けだしていきたくなるような、
 そんな物語を書きたいと、ずっと考えていました。」
とある。
海とセーリングが大好きな人が書いた優しい物語。


海とセーリングが大好きな大人にもオススメの一冊。

       
暖かな陽射しの中で
ヨットが走り出すときの水音を想像すると
もう、海に行きたくてしかたがない。