つくろい [よいもの]
ちょっとしたイライラは
けっこう行動に反映されるもので、
この日はいちばん愛用の湯飲みが犠牲になった。
別に投げつけたりしたわけではないが、
食器棚に戻すとき、手からするりと……。
普段ならこんな失敗はしないのに。
湯布院の陶芸作家さんの作品で、
本当に使い心地の好い湯飲みだったので、
「よりによって……」と情けないことこの上ない。
買ってきたときの一枚。
しくしく泣きながら(大げさだけど、こんな気分)、
その辺にあったボンドでくっつけようとしていたら、
夫が「それじゃダメだ、強力なのがある。」と、自ら「つくろい」を始めた。
国宝に有名な「つくろい」の茶碗「馬蝗絆(ばこうはん)」がある。
美しい青磁の茶碗の疵を鎹(かすがい)で見事に止めたものだが、
それがかえって名を高めた。
「金継ぎ」など「つくろい」の技法は、一度は壊れたモノに新たな風景を作る。
「壊れた箇所や壊れ方に合わせて修繕された焼き物はそれまでとは違う佇まいとなり、
大切に使われたからこそたどり着く、たったひとつの美しさを獲得します。」
これは、「つくろい」をテーマにした展示会のコピー。
わが家の修理人は、拾い集めた破片をどのような風景にしてくれるのかな。
接着剤は、バイクの修理に使うモノらしいが、こんなところで役に立つとは。
透明なのもあるが、うちにあったのはこれなので。
なぜかひび割れ以外のところから水が漏れたりしたのだが、一応修復完了。
新たな風景を生かすにはどう使うのがよいか考案中。
以前 マグカップを欠いたときは、多肉を植えたんだけれど。
これ以上つくろいを増やさないように気を付けなくては。
心おだやかな毎日を……ね。