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「たちぎれ線香」 [今日の私]


お盆前のこと。



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庭や畑の草むしりをしようと
麦わら帽子、首にはタオル、腕にはカバーをつけて
完全防備で作業を始めたのだけれど、
朝は、蚊が攻撃の手を緩めない。


そこで、いつも蚊取り線香を用意している。


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風上に置いて、一緒に移動しながら草むしり……。
こうやって何日か使って、あと少しで一巻き終わるというある朝のこと。



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酷暑になる前だったが、長く作業はできない。
「そろそろ止めなさい。」という呼びかけに、
「蚊取り線香がもう切れたから終わるよ。」と応えたところで、
「落語みたいやな。」



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オチのところで
「もう線香が断ちやした。」という噺だ。(私はこのオチで覚えていた。)


でも、記憶が曖昧なので、どんな噺だったかなと調べてみる。
YouTubeで桂米朝師匠の「たちぎれ線香」があった。


芸者小糸に入れ込んだ若旦那と厳格な番頭とのやりとり、
まんまと100日監禁されるハメになった若旦那の間抜けぶり、
若旦那に会えぬままに死んでいった小糸、その最期の様を語る女将の恨み言、
仏壇に供えた小糸の三味線が、若旦那の好きだった地唄を奏でる様…….。


音声のみだったが、登場人物の人情味あふれるやりとりが目に浮かび、
噺家の話芸の巧みさにすっかり引き込まれていく。


……そして、ぷっつり三味線の音が消え、慌てる若旦那に女将、

「お仏壇の線香が、ちょうど立ち切りました」



しみじみと語って聞かせて、そして軽妙な結末。
昔、芸娼妓の花代(揚げ代・玉代)は、
線香一本のたち切る(燃え尽きる)時間を単位としたところから来るオチだった。



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お盆に帰ってきたであろうお父ちゃんには悪いが、
お墓参りをしていても
迎え火送り火を焚いていても
お盆の間中、線香の香りがすると、この落語が思い出されて可笑しかった。


ふるさとのお盆の行事「小松明(こだい)」       

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そのあと落語にハマってしまって、夫と一緒に
圓生師匠の「寝床」「蒟蒻問答」「掛取万歳」「能狂言」と
YouTubeで続けざまに聴いてしまった。YouTube、ありがたい。


まあ、お父ちゃん以外は誰も帰省できない、寂しすぎるお盆ではあったが、
落語を聴いて笑えたのだから「よし」としよう。


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