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叔父とヨット [ヨット]

さっきまで夫の叔父が来ていた。
夫の父の弟であるが、兄弟の中ではいちばんわが家に近い人である。


夫や夫の母と思い出話に花を咲かせていたが、
叔父が夫にヨットについての質問をした。


まさか87歳の叔父の口から「ヨット」が出るとは思ってもみなかったので
ちょっと驚いたのだが、
叔父が昔ヨットに救助されたことがあると言うので、
二度びっくりである。

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昭和25年か26年頃の話であると言う。
まだ二十歳そこらの叔父は東京の会社に勤めていた。


同郷の友人と誘い合って、江ノ島近くの海水浴場に出かけたときのことらしい。


海水浴場はそれはそれは大変な混みようで、
そんなところで遊ぶ気はしない。
叔父たちは貸しボートで沖に出ようということになった。


江ノ島が見えて河口の近くであったという。


ちょっと沖に出たところでボートから
きれいな海に飛び込んで
ボートの回りを泳いでいたらしい。


するとボートがどんどん流されていく。
無謀な若さだとお許しいただきたい。
叔父たちはかなり慌てた。
流されたボートは泳いでも泳いでも捕まるものではない。


呆然と海に浮かんでいるとき、
ヨットが現れて叔父たちを拾い上げ、ボートも回収してくれたというのである。
ヨットは「さあっ」と近づいてきたそうだ。

叔父の記憶の中のヨットが見えるような気がした。


地図を見ながら、江ノ島がどの位置に見えたかなど聞いてみたが、
島が近くに見えていたことは確かだが、方角などは忘れていた。



……叔父は5年ほど東京に住んでいたのだが、
しばらくそのときの思い出話をして帰っていった。


思わぬところにヨットの話が転がっていた。
忘れぬうちにセピア色のヨットの記憶を記しておこう。


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